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大場代表
ISC留学net代表兼LHE取締役会長
大場 規之OBA, Noriyuki
毎月10日更新

ニトリに想う

 

今朝の新聞に、紀伊国屋新宿店等でのベストセラー第一位として、“ニトリ成功の5原則”という本が紹介されていました。

私は似鳥昭雄さんのご功績と事業の成功に常々経営者としての魅力を感じております。
「お値段以上♪ニトリ♪」というキャッチフレーズやコンセプト。そして、そのコンセプト通りのモノを全国で消費者に提供している実績は、日本の家具や生活用品業界に革命を起こしたと言っても良いでしょう。

消費者は”お値段以上”の価値あるものを手にすることができてハッピーであり、ニトリも29期増収増益という素晴らしい成果を残しています。
何も問題が無さそうですが、私は子供たちにこのニトリの商品を買い与える度に、少し心配になる事があります。

それは、子どもたちの“モノのクオリティ(品質)”に対する評価基準の変化(低下)です。

ニトリの商品は、確かに“お値段以上”なのですが、決して品質が良いとは言えないと思うのは、実際にニトリの商品を使われたことがある方は感じる方もいらっしゃるでしょう。
我が家でも、子供達の一人暮らしの家財道具として多くのニトリ商品を購入し、その値段の驚くべき安さに感動をしたことすらあります。
しかし、子供の住まいの変更の為に引っ越しを手伝うといったケースのように、ある程度年月が経過してからそのモノに接すると、その劣化度合いや不具合の生じ方に、がっかりする事もあります。
“お値段以上”の価値を一定期間享受したのですし、ある程度覚悟をして購入しているわけですから、もちろんニトリを責めるつもりはありません。また、こうした品質を知りつつ、今後もまたニトリの商品を買う事になるのでしょう。

ただ、漠然と思う事は、子供達にこのニトリクオリティを日本のスタンダードと思ってほしくないという事です。
こんなことを書くと「カネも出さずにえらそうなことを言うな」と言われそうですが、財力が無いと日本の品質を知ることができないと思う事はとても残念です。それに、我が家を筆頭に、圧倒的多数の庶民が接する“モノ”の品質がその国の人々のクオリティを決めてゆくと思うのです。

子供達には、これからの人生の中で、自らの意識の中に形成されてゆく“品質に対するスタンダード”を考えた時に、“ホンモノの品質”と“お値段以上の品質”を見極められるだけの力を子供達に身につけてもらいたいと、ニトリの商品に出会う度に気になるのです。

私が初めて海外に出てからもう35年以上が経過し、多くの国や地域でいろいろなサービスやモノに触れてきましたが、日本のそれらと海外のそれらとは大きな開きがあることを、海外に出る度に感じてきました。
特に、フランス・ドイツ・イギリスなど合計4年半継続して海外に赴任していた後には、日本に帰国した時のサービスのクオリティの高さに“安堵感”を得たのを今でも忘れません。

何の“安堵感”だったかと思いだしてみると、海外に出るまでの20年以上の日本での生活で染みついていたサービスやモノに対する“期待度”と、それらの国々で提供される“モノやサービスの現実”のギャップが無くなったことなのだろうと思います。

例えば、その4年半の最後の滞在地はフランスでしたが、フランスから日本への引っ越しの為に、家族の引っ越し作業を業者に依頼をしました。日本の業者であればその作業に10分とて遅れてくることは希でしょう。しかし、その時の引っ越し業者は、4時間も遅れ(午前9時の約束が午後1時過ぎ)、しかも悪びれもせずにやってきたのです。

しかし、こんなことはフランスの生活では日常茶飯事の生活でしたから、それに慣れ、そうした日本人の感覚からしたらとんでもない事にも、それなりに対応する“処世術”の様な物を身に着けた私達は、それなりの対応をして何とか引っ越し作業を終えてその帰国となったわけです。

私達の“安堵感”は、その身に着けた“処世術”を発揮しなくても良くなった。つまり、生まれ育った日本のサービスやモノに対するスタンダードについて、期待と実際が一致し、期待するものが当然のように与えられる世界に戻ったことへの、安心感や平和な気持ちだったのです。

今、日本の“おもてなし”が見直され、それを輸出しよう、それを日本に来る外国人に提供しよう。という動きがとても盛んになっています。これは素晴らしい事ですし、これまでの日本が海外諸国に対して、最も“ウリ”にできるものなのかもしれません。

一方では、日本の“おもてなし”は過剰サービスという見方をされることもありますし、先の例の様に“10分とて遅れてこない日本の常識”が世界的に見れば異常で、4時間遅れる事が世界標準なんだから、4時間遅れても生きて行ける生き方をすることの方が大切である。という方もいらっしゃるでしょう。

しかし、これまでの日本人が歴史の中で蓄積してきたモノに対する品質や、行動や行為に対する真面目さ・サービスのクオリティは、諸外国に対するとっても大きなアドバンテージです。それを基本として日本人はこれまでの日本の“価値を売る”事が出来るのです。逆に言うと、それを無くしてしまっては、日本の生き残る道はとても狭められると言っても過言ではありません。

ニトリに囲まれて育つ私達庶民の子供たちは、そうした日本のクオリティを後世に引き継いでゆくことができるでしょうか?
とても心配です。

2016.10.10
大場規之